松竹梅(君が代)

(本調子)
君が代は 恵みかしこき高砂の 松の栄えや限り知られぬ
いつまでも ふた葉放れぬ姫小松 子の日の遊びたをやかに
曳くや緑の色そへて げに豊なる三保の浦 たな引く霞花ふりて
雪をめぐらす白雲の 松吹く風か音楽の声ぞ妙なる東歌
入る日残れる松蔭に 天の羽衣稀に着て 色香床しき霓裳羽衣の曲をなし
天津御空に乙女子が鞨鼓を打って舞ふよ
迦陵頻伽も東遊びの駿河舞 おもしろや
二上り)
降りつむ雪を踏み分けて夜半にや 君が通い路も 井筒の蔭のしのび合
人目の関は越ゆれども ゆるさぬものを下紐の
(三下り)
いつか逢瀬を一と筋に 言葉の露の玉章とくらべこしなる振分髪の長かれと
ちぎり嬉しき閨の風 洩れて浮名の立つ日もあらば 末の世かけて睦ましや
梅の数々指折りそへて 数へかぞふる手鞠梅 空も長閑にやり梅や
着なす姿の鹿の子梅 未だいとけなきとりなりも小梅振りよき八重梅の
誰が袖ふれし匂ひ梅 包むに余る恋風に 靡く心のしだれ梅
咲きそめしより鶯の いつか来馴れてほの字とは 放れぬ中じゃ
ないかいな それへ それそれそれ そうじゃぇ 
賑はしや 栄えさかふる常磐木は 千歳の松の色かへぬ 
げにまた梅は花の兄 南枝始めて開きそめ
薫りは世々に呉竹の いく萬歳と限りなく 齢寿く鶴亀の 寿命長久繁昌と
尽きせぬ宿こそ めでたけれ

(文化譜本より)


名題:松竹梅乙女舞振
作詞:不明
作曲:三代目杵屋正治
年代:天保14年