越後獅子

(三下り)
打つや太鼓の音もすみわたり 角兵衛 角兵衛と招かれて
居ながら見する石橋の 浮世を渡る風雅もの
歌ふも舞ふもはやすのも 一人旅寝の草枕
おらが女房をほめるぢゃないが 飯も炊いたり水仕事
あさよるたびに楽しみを ひとり笑みして
来りける越路がた お國名物は様々あれど 田舎なまりに片言まじり
獅子唄になる言の葉を 雁の便りに 届けてほしや
小千谷縮の何処やらが 見え透く国の習ひにや 縁を結べば
兄やさん 兄ぢゃないもの 夫ぢゃもの

---- 濱唄
来るか来るかと濱へ出て 見ればの ほいの 濱の松風音や
まさるさ やっとかけの ほいまつかとな
好いた水仙 好かれた柳の ほいの 心石竹 気はや紅葉さ
やっとかけの ほいまつかとな

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辛苦甚句もおけさ節

何たら愚痴だえ 牡丹は持たねど 越後の獅子は
己が姿を花と見て 庭に咲いたり咲かせたり
そこのおけさに異なこと言はれ ねまりねまらず待ち明かす
御座れ話しませうぞこん小松の蔭で 松の葉の様にこん細やかに
弾いて唄ふや 獅子の曲

向ひ小山のしちく竹 いたふし揃へてきりを細かに十七が
室の小口に昼寝して 花の盛りを 夢に見て候

【晒しの合方・初段】

見渡せば 見渡せば 西も東も花の顔 何れ賑ふ人の山 人の山

【晒しの合方・二段】

打ち寄する 打ち寄する 女波男波の絶え間なく
逆巻く水の面白や 面白や

【晒しの合方・三段】

晒す細布手にくるくると さらす細布手にくるくると
いざや帰らん 己が住家へ


(文化譜本より)